渡邊穣のブログ

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ヴァイオリン 音程を学ぶ (3)

音程には優先順位があります(続き)

ヴァイオリンの開放弦を基音にして長音階を弾くと、調性はG–dur、D–dur、A–durが成立します。
この場合、主音と属音は開放弦です。どの調でも左指の間隔は同じですね。
要するに長音階は主音と属音の上に同じ間隔で、全音-全音-半音の間隔で並んでいます。
このパターンを一つの単位として使います。
A線ではA–B–Cis–Dとなります。このCisはA-durでは下属音、D-durでは導音ですね。

さて、ここで題に掲げた倍音の話をしなければなりません。倍音の基本的説明は省略します。
今回のテーマでは、二つの音程を鳴らした場合に生じるうなりのことを倍音と呼ぶことにします。
倍音は実際には弾いてない音程がどこから聞こえてくるのかわからないような感じで耳の中で鳴ります。
私は子供の頃、この倍音が単音を弾いている時も耳の中でガンガン鳴っていました。
「弾いていると耳鳴りがするんだけど」と尋ねたこともあったのですが、正しい答えは得られずに、自分では雑音ということにして気にしないようにしていました。(残念なことです)。

+ちょっと話が脱線します。ヴァイオリンから超低音を聴くことができます。
まず二つの弦で一度の同音のユニゾンを弾いてみてください。
それから片方の指を少しずつずらして音程を変えていきます。
半音の隔たりに到達すつ前あたりからオルガンのペダル音のような音が聞こえてきます。
これがこのテーマで言うところの倍音です。最初はE線とA線で試してみてください。
低い音程で試すと倍音が聞き辛くなります。

では、A-durを使って実際に旋律的音程と和声的音程はどのくらいの差があるのか聴いてみましょう。
まず、AとEの完全五度を正しく調弦してみましょう。
AとEの完全五度を弾いた場合に聴こえる倍音は低いAです。
E線のアジャスタをゆっくりと回してみてください。低いAの音が聞こえますか。
その倍音のAの音程をA線の音程と完全なオクターブになるようにチューニングしてください。
これで完璧な完全五度の完成です。
(前に書いたように実際には、様々な要因があって、コンサートではEは高めにチューニングされます。
このことについては後日「音程測定機」の項目の中で触れる予定です。)

音程測定機にA2, A3のようにオクターブの表示があるものを持っていたら、使ってみてください。
A線を単音で弾くとA4と表示、E線と一緒に完全五度を弾くとA3と表示されます。
これは音程測定機の特性で低い方の音程に、この場合、倍音に反応しているのです。

A線上で第4指でEを弾きます。開放弦のEとピッタリに合わせてください。
第4指のEと長三度のGisの和音を弾きます。この場合はEの倍音が聞こえます。
弾いているE、Gis倍音のEが協和するようにGisを調律してください。
(うまくいかない場合は、同じことを5度下げて試してください)。
このGisが基音Aに対して正確な和声的音程のGisです。
次は、Gisの指を置いたままE線のAを弾いて開放弦のAに合わせてください。
最後に、このE線上のAとGisを弾いてみましょう。
どうですか、Gisはは旋律的には低すぎてこの二度関係は綺麗に聞こえませんね。
では、旋律的音程としてのGisはどのくらい高くすれば良いのでしょうか。
それには答えはありません。確定できないからです。

ヴァイオリンの音程の優先順位はA-D-Cis-Hです。
AとDは常に確定しています。Cisは下属音か導音か、旋律的音程か和声的音程かで変化します。
Hは他の音にバランスさせます。
ラレドシラと弾いて一番美しいと思える音程を作ってみてください。

何の音が倍音として聞こえるかは、二つの音を弾いてそれを長三和音に当てはめて考えます。
その根音が聞こえるのです。
しかし、実際は楽器の固有振動に影響を受けて他の倍音が大きく聞こえることが多々あります。
長三和音に当てはまらない音程関係はこの方法がつかえません。