初期教育に起因する問題点 (5)
####弓の持ち方 -2-
手の形は顔のように各人が同じ形をしていません。お弟子さん達を見てきて、それぞれの手の形の違いというのは大きいと感じています。
中にはヴァイオリンを弾くには不利ではないかと思われる人もいますが、その人に合った合理的な使い方に導くと、難曲でも驚くほどにこなせるようになるのです。恵まれた手を持っているのに使い方が悪い人もいます。
そもそも音符に書いてもそれだけでは右手の運動の説明にはなりません。
現代においても、右手の動きをどうするかという説明は観念的であり、習うより慣れろという状態ではないかと思います。
動きを言葉で説明するのは残念ながら困難なので、ここでは練習について私が折に触れて言っていることを書きます。
練習おいて大事なのは何をどう練習するかを考えることです。
弾いていて間違いが生じると、それは明白な事ですから間違えないように練習しますよね。
練習を積めば音符を正しく弾けるようになります。間違いは結果であって原因は残っているかもしれません。間違いの原因は何でしょうか。往々にその本当の原因に気付かずに通り過ぎてしまうことがあります。本当の原因を見つけるという姿勢を保っていると、どんな練習をするかという視点も変わります。
自分の中に感じる違和感に正直に自分に向き合ってみましょう。違和感をねじ伏せるのではなく解消する方法を考えてみるのです。
違和感と間違いは自分の先生だと思ってください。そこから何をどう練習するべきかを知ることとができます。しかし、違和感の原因がどこにあるのかを見つけるためには知識が必要です。
クレモナ在住の久我さんというヴァイオリン製作者の方のホームページに「子供の時に使う楽器はその人の将来の音楽性を左右する」と書いてありました。同感します。
私の経験では、自分の音楽が形成される頃に使っている楽器の影響は生涯にわたるような気がします。
弓の持ち方というのも同じです。将来の音楽性を左右する要素のひとつです。
私はレッスンで「弓を持たないで」と言う表現を使うことがあるのですが、その意味は必要以上の力で弓を握ってはいけない、ということです。
では、どのくらいの力で弓を持つのかを説明しましょう。
弓を縦に持ちます。その状態から指の力を少しずつ抜いていって弓が滑り落ちるようにしてみます。本当に落とさないように左手の手のひらを添えて、その上でやってくださいね。
弓が滑り落ちる寸前の力が弓を持つのに必要な最低限の力です。
弓を水平の状態に移すと小指に力を入れ流ことになりますね。弓を空中に持ち上げた時に弓を支えるのが小指の役目です。
その時に親指にも同等の力が加わっていることに注目してください。
親指の状態というのは、その他の全ての指の状態を反映しています。
例えば、親指が八角形のどこの面を押さえているでしょうか。その角度が横になるほど弓をはさんで持っているということがわかります。