渡邊穣のブログ

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ヴァイオリン 音程を学ぶ (8)

音階のモヤ靄を晴らす -1-

音階を練習している時には、少なからず音程に不安定な感じが伴うのではないでしょうか。
普通は繰り返し練習して音程を探るか、ピアノに合わせて音程を覚えたりしますね。

ヴァイオリンの習い始めを思い出してください。
最初に開放弦のA音がでてきて、次に1の指、2の指、3の指の順番で出てきますね。
さらに4の指を使うことになり、E線も加わるというパターンが、ほとんどの教則本で同様です。
つまり、主音から始まり第2音、第3音と積み上げて音程をとっていくのですが、そこに不安定感を生む原因があるのです。
主音に対して第2音、第3音は旋律的音程では選択範囲のある音程なのです。
特に、ラシのように主音と第2音の二度間隔の音程は不安定なのです。
不安定なものに不安定なものを重ねても確定したものは生まれません。
これが楽曲の中で和声の裏付けがあると、和音構成音と和声外音の区別ができ、安定感が生まれるのですが、ラシと弾いただけでは根拠が無いので不安定に感じるのです。

最初の練習段階から旋律的音程と和声的音程の使い分けを理解することにより、不安定感を持たずに音階の練習に取り組むことができます。音階の練習が面白くなるでしょう。

A–durを例に使います、1stポジションです。
まず、倍音(うなり音)を使ってA–durの各音程を確定したものにしてみましょう。
長調は基音の自然倍音で構成されている音階です。その考え方で各音程を確定していきます。
この音程を私は和声的音程と呼んでいます。

旋律的音程でも和声的音程でも確定した音程は、主音Aと第5音Eです。
A–durの場合には開放弦になります。

A線のEを開放弦のEと合うように第4指で押さえてください。以前の項でも書いたのと同じです。
読んでない場合は、倍音(うなり音)についての項を先に読んでください。

4の指のEと、E線のGisで長三度をならすと倍音の低いEがなります。
この3個の音が綺麗に調和するようにGis音を調整してください。
調和したらそのGis音は和声的に正しい、確定できる第7音です。

次にこのGisの指を置いたまま、先ほどのA線の第4指EとE線の第3指Aを押さえ完全四度を鳴らして下さい。低いAの倍音が調和するように第3指のAを調整してください。
これで調和したE線第3指のAと、開放弦のAは同じ音程になります。確かめてみてください。

先ほどの和声的音程の第7音GisとAを続けてソラソラと何度か弾いてみてください。
どうですか、Gisの音程を上げたくなりませんか? Gisを少し上げてソラソラと弾いてみましょう。
上げた方が気持ち良くありませんか?
上げた音程は確定した音程ではありません。選択の幅が有る音程です。
どの程度上げるかには個人の好みで変わります。これが旋律的音程の導音としての第7音です。
第7音は和声的音程(ドミナントの第3音にもなります)と、旋律的音程でかなり差のある音程なのです。

次に第6音、Fisと開放弦のAで長6度を鳴らします。聞こえる倍音はDです。 これが調和すれば第6音が確定です。

第4音のDは主音のAと完全4度なので、開放弦のDと同じです。

第3音のCisは開放弦のEと短3度を鳴らします。倍音はAです。

第2音のHは開放弦のEと完全4度を鳴らします。倍音はEです。

倍音の聞こえ方は楽器の固有振動に影響を受けます。 調弦は広すぎないように音程測定機でチェックしておいてください。

これでA–durの確定した音程が揃いました。
これらの音程で音階を弾き、音程の道標として身につけてください。
ただし、第7音は和声的音程と、高めの導音の使い分けが必要です。
次回はこの音程を元にして旋律的音程にしてみましょう。