渡邊穣のブログ

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ヴァイオリン 音程を学ぶ (11)

音階のモヤ靄を晴らす-4-

三度の音階の音程には、常に漠然とした難しさが感じられます。
一般的に三度の音階は練習を積んで、なんとなく問題を緩和した妥協的な音程で弾く結果となっているのではないでしょうか。
それはそれで一つの音律ではありますが、ここで挙げる問題点に正面から取り組むことによって、やるべきことがハッキリと見えてきます。
ここでは左手の技術的問題は除き、音程について説明します。

この漠然とした音程の難しさは何が原因なのか考えてみましょう。
C–durを例にとります。下声部に主音Cを置いて音階を形成します。

三度の音階は、横の流れの旋律的音程と、縦の響きの和声的音程が同時に存在しています。ですから、下声部は旋律的音程で、上声部は下声部に対して和声的音程を取るというのが整合性があります。
これを正確に実行してみて下さい。

C–durの三度の音階、ドの主音を下声部にしてドレミファソラシドと弾いた場合に発生する「うなり音」を順番に書いておきます。
C B C F G F G C
となります。
どうでしょう、前に書いた音程の優先順位との関係を感じませんか。

さて、一例としてHに注目してみましょう。
下声部の導音としてのHと上声部のドミナントの第三音としてのHは違う音程になります。
ところが、響きが自然に要求している和声的音程と長年の間に身についた旋律的音程が違うことに留意せずに、このHを同じ音程にしようとする無意識の習性が働いてしまうのです。

更にやっかいなことに、人間は上声部を優先的に聞いてしまう性質を持っています。
下声部がC–durの主音階であることはわかっています。ほとんどのヴァイオリン奏者は最初にCの音程を取り、その上にEの音程を乗せて音階を弾き始めるでしょう。
(この場合はD線のEが開放弦のEより低くなります。Cを最初から高めに取る人はまずいないでしょう。)

ところが、下声部が旋律的音程であるはずなのに、どれかの音をきっかけに、いつの間にか上声部を旋律的に感じてしまっているのです。
これは気が付きにくいことなので、よく自分を観察してみてください。
このことによる代表的な症状の一つは、始まりの音程と、上行下行して帰ってきた最後の音程がズレてしまうというものです。

開放弦の影響の問題もあります。フィンガリングで開放弦を使わざるを得ない時の問題もあるのですが、ここで注目したいのは、ヴァイオリン奏者は、ソレラミの音程を開放弦の音程から外れることを嫌う習性がある、ということです。楽器の響きが悪くなるからです。
導音が開放弦と同じ音になるAs–dur、Es–dur、B–dur、F–durヴァイオリンにとって弾きにくい調性である理由です。

これらの問題を常に念頭において練習してください。
音階を使っての音程の練習がより高度なレベルに達するでしょう。