渡邊穣のブログ

おもにヴァイオリンに関する事, 時々その他

ヴァイオリン 音程を学ぶ (2)

倍音を聴く

音程には優先順位があります

ここでの音程の話は、ヴァイオリンの練習の話であることを前提としますます。

実際の演奏では調性の解釈、周りの楽器の音程など様々な影響を受けて音程は変化せざるをえません。ヴァイオリン単体でも開放弦の影響を受けます。 例えば、よく知られているところで「サンサーンスのヴァイオリン協奏曲第3番 3楽章」の出だしの和音です。 この曲は一般的にはかなり若い年齢で勉強します。私がこの曲を初めて練習した時には、この和音がなぜ綺麗に弾けないのかわかりませんでした。 この和音はGとEの開放弦に合わせてEとHを調節しなければならないのです。その結果、EとHの完全5度は犠牲とせざるを得ないのです。(「指の押さえ方」として別項目でとりあげます。)

本題に戻りましょう。ヴァイオリンの初歩の段階では、開放弦と第1指を使って、例えばラシラシと弾きますよね、まだまだピアノなどの楽器に頼って練習する段階です。(しかし、人生で一番、聴力が高い年齢です。) この「シ」は厳密には音程の練習になりません。なぜなら、まず調性が無いからです。 ヴァイオリンを本格的に学ぶ生徒さんは、この段階でピアノを弾いている子が多いので、たいていはA–durの感覚で弾いているはずです。この「シ」、つまり音階第2音は音程の選択範囲が広い音なのです。

次に練習はラシドシに発展します。この場合、大抵は左手の掴み易さを考慮してドはナチュラル、A–mollの感覚で弾いているはずです。 この段階でもまだまだピアノに頼って音程を取っている子がほとんどでしょう。この段階でピアノとヴァイオリンの音程の取り方に明確に乖離が生じてきます。ヴァイオリンでのこの「ド」は旋律的音程で考えても和声的音程で考えても、良く調律されたピアノの「ド」とは違うのです。

音程が正しいかどうかの判断は一つの音だけではできません。二つの音の相対関係で成り立ちます。 A–durでラシドレミを弾いた場合に確定している音程、音程を取る優先順位は開放弦のラに対して完全5度のミ、次に完全4度のレですが、この「レ」を音階の下属音=属音の導音、つまり旋律的音程として弾くと音程の選択にわずかに幅が出てきます。「導音は高めに取ると綺麗」と同じ理屈です。 和声的音程と考えるとミも確定するのですが、(この場合のミとファもピアノの音程とは違います)、ヴァイオリンを単体で弾いて、このラシドレミを和声的音程で弾く人はまずいません。この問題に突き当たるのは、おそらく弦楽四重奏を弾くことになった時でしょう。

私がドイツの教会でBachのコンチェルトを演奏した時に同僚に「教会で弾いた経験があまりないのではないですか」と言われました。私は残響を上手く考慮に入れて演奏できていないという意味に捉えたのですが、違っていました。 要するに、残響が長いので音程がより和声的音程に近ずくということだったのです。